なりそこない

正常にも異常にも、幸せにも不幸せにもなりそこなった存在

ひさしぶりだね。を発声する直前は、吐きそうに憂鬱だけれど

 久しく離れていたものに、再び入っていくことを思うと憂鬱になる。試験期間のため一か月ほど行かなかったアルバイト先に、久しぶりに出勤する日の前夜なんて最悪。しばらく訪れていなかった部室には足を向けるのが億劫だし、遠くに住んでいる友人と会う約束もどこか不安を掻きたてる。こういう感覚はきっと、大なり小なり多くの人が共有できるだろう。(あれ……、できない?やっぱり、できる?かな)

 この不快感は当日に向けてどんどんと募っていく。その日の朝はベッドから起き上がるのが嫌で仕方ないし、そこへ向かう電車の中では吐きそうな気分で逃走経路をくりかえしシミュレーションしてしまう。緊張が最高潮を迎えるのは、その場にたどり着いてしまった瞬間。

 

「こんにちは、おひさしぶりです」

 

の一言はありえない粘度でもって喉の奥に絡みつく。とてもつらい。嫌い。

 ただ、その言葉さえ吐き出してしまって、相手と少し会話をすれば一気に楽になる。それから朝にはあれだけ憂鬱で仕方がなかったことを自然に楽しんでいる自分が見つけて、情けない気分で苦笑いする。私の憂鬱を返せ。これを毎回のように体験する。どうしても学習しない。いや学習しているからこそ、どれだけ憂鬱でもその場に向かえるのだけれど。

 だから私は基本的に行きつけの場所(お店なんか)を作るよりも、初めての場所に行くことを好む。他人に覚えられてしまうのが嫌なのだ。接客が放任的な大型店舗はありがたい。密着して接客されると、二度目に行くのはちょっとつらい。もっともこれは覚えられるかどうかよりも接客されるのが怖いだけかもしれないが。

 

 そんなこんなで明日は久々の出勤だ。やはりやはり、とても怖いような気がしている。ううぅ……(´・ω・`)