なりそこない

正常にも異常にも、幸せにも不幸せにもなりそこなった存在

欲にまみれて、生死

 ここ数日、これまで散々悩まされ続けてきた食欲と、食欲の代替として利用しまくっていた性欲が驚くほど落ち着いている。食欲については普通に三食採っているのでないわけではないのだが、毎日のように襲ってきていた過食衝動らしき苛立ちがかなり小さくなった。いわゆる夏バテなのだろうか。

 代わりに、というべきかはわからないが、ほぼ同じ時期からとにかく眠い。普段は休日でも七時前に起きてしまうことがほとんどだったのだが、ここしばらくの休日には気づいたら九時過ぎということもしばしばである。昨夜も普段より一時間以上早く就寝したくせに今朝の目覚めは悪く、日中にも眠気に襲われた。

 眠気によってパフォーマンスが低下することは事実だが、食欲が抑えられていることは私にとってかなり大きいメリットだ。増加した睡眠時間と同程度の時間を毎晩食行動などに費やすことを考えると、カロリーを摂取もなくむしろ休息できる睡眠は素晴らしいと感じられる。

 ここで連想されるのは、「生と死」である。食欲・性欲が「生」に対応するならば、眠ることは「死」そのもの。生の否定、死への耽溺。何も採らず、誰も愛さず、ただ棺のようなベッドの上で昏々と眠りつづけるというイメージは、私にとってとてもロマンティックだと思われるのだが、あなたにとってはいかがだろうか?

 ただ、私の変調はまったくもって正常の範囲に位置するため、このようなイメージと直接の関係はない。どうにもやめられなかった夜食を食べずに済んでいるというだけのことである。そしてこの状況に陥っている原因が全くわからないために、いつ元の状態に戻るかが不安だ。もしこれが私にとって不調であるのだとしても、治ってくれるな。美しいイメージと自己をすこしでも同一化させたいと願うのはいけないことだろうか?